公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『パリのアメリカ人』 / 劇団四季

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  • バレエ!今年はバレエも観たいと思っていたら、ひょんなところで本格バレエパートをもつミュージカルに鉢合わせた。

  • 劇伴は全編ガーシュウィンシンフォニックジャズ。映画ではなく、すなわち字幕の無い1環境での上演な以上、どうしてもその少し滑稽ともいえる訳詞に相対せざるを得ない。しかし、そこに拒否反応さえなければ上質な音楽に 3 時間どっぷり浸れる。

    • これで生オケなら言うことないんだけど、最近の四季で生オケはそもそも期待できない要素。
  • 今年からの新規演目のためか、演出方法にはこれまで観てきた他演目に比べるとコンテンポラリーなものが多く見られた。

    • 舞台(劇中の場所)が変わり、背景の街が変わるときに、ワイヤーフレームのような家々の外形線が黒のバックの上を走っていき、白銀に走査された窓の中に照明が灯って徐々に街の輪郭が立ち上がっていく。演目の新旧を問わず、合う/合わないのはっきりした演出ではある気がする。

    • プロジェクションを多用した上記のような演出もある一方で、「妄想アメリカ」のシーンではビカビカした電飾のアーチを何重にも板の上に持ってきて、目の覚めるような群青と白熱のコントラストで「(第二次大戦後の)フランス人が夢見るアメリカ、摩天楼」を現出させたりもする。これは演出全体の統一感がどうという類のものではなく、夢現2、あるいはフランスとアメリカのコントラストとして捉えれば、演出のビュッフェとして楽しめる。

    • クライマックスの長尺バレエパートでは、夢とも現ともつかない第三の美術と演出で、劇中の現実におけるバレエ公演と、その中でリズが向かい合った精神性とのミキシング。

      • ラ・ラ・ランド』終盤の映像表現は本作(の映画版?)のオマージュらしいけど、特にこのパートにおいてその共通性のようなものを感じた。シークエンスにおける人物の精神性も、どこか似ている。

      • この長尺バレエパートはバレエもガーシュウィン(インスト)も堪能できる、良いクライマックスだった。ただ、観た回ではおそらく、一度だけリズが舞踊中に足を滑らせて転んでいた。

  • 人生はアメリカ映画ではない…リズはそう言うけれども、時代背景は置いておいても始終とてもドラマチックな恋愛してるじゃあないか。

    • アメリカ人の男が自分の呼びやすいようなあだ名をユダヤ人の女の子に付けてアルターエゴを芽生えさせ、押して押して押すと、何とかなる。リズを執拗にライザと呼びかえるジェリーにはちょっと引いた。

  • 四季といえば、のディズニー系や、これまた代表演目である 『キャッツ』 とはずいぶんターゲットを変えてきている印象。端的に言ってしまえば「大人向け4」。上演開始から日も浅く、まだ口コミが固まるまで様子見なのか、席も比較的取りやすい5。私の観た回では、おそらく圏内の中学生あるいは高校生の団体が芸術鑑賞の一環で、団体で観にきていた。バレエやガーシュウィンに引っかかりを持てる人なら、観に行くといいと思う。

日時
主要キャスト7
  • 酒井大:ジェリー・マリガン
  • 石橋杏実:リズ・ダッサン
  • 俵和也:アダム・ホックバーグ
  • 加藤迪:アンリ・ボーレル
  • 岡村美南:マイロ・ダヴェンポート

  1. 来日公演のように上演国と座組の母語が異なる場合には、だいたいリアルタイムで字幕を同期する装置が舞台袖に備え付けられる。例えば 『RENT』 がそうだった。

  2. 説明は無いが始終、硬く不自然な歩き方をするアダムも、このシーンでだけは華麗にステップを舞う。おそらく現の彼は戦傷によって脚が不自由になったのだろう。

  3. ここで笑ってしまうと浮く。

  4. だからといってディズニー系を子ども向けと切り捨ててはならない。騙されたと思って 『アラジン』 を観に行ってほしい。

  5. 人気/代表演目に比べると対象層が絞られているからかもしれないけど、そうなると恒常的に取りやすくなるのかな?

  6. 3 月中旬からは KAAT に場所を移して上演。

  7. 観た回のキャスト。四季の例に漏れずマルチキャストだと思われる。