『エグ女』 / 脚本・演出: 金沢知樹
女子ってさ~
肌柔くてさ~
髪綺麗でさ~
おっぱいまん丸でさ~
ほんでさ~
ほんでさ~
すっげえエグいイキモンだよね~~
はい。
…演出家の方は男性のように見受けられますが?あ、脚本もされている?なんで?
端的に言って、客層のリテラシーを低く見積もって、あまり良くない感じで作る程度の低い制作のように見受けられました。『女体シェイクスピア』1と同じにおいがした。
あくまで私見ですが、芸術の類に関しては、相手が初心者であっても先ず“本物”をみせるべきだと思っています。あるいは、そのように最大限の努力を払うべきだ。別に初心者はその芸術を今から“演る”わけではなく、先ずは“鑑賞する”だけだからです。劇団四季が老若男女、舞台初心者上級者を問わずウケるのは、あれが本物の商業演劇2だからでしょう。
この“舞台”はどことなく、構成作家が作るオムニバスコントの延長に見受けられ、舞台演劇というには厳しいものがあります。女性声優や女優でキャストを揃えた華々しい布陣を“オムニバスコント”というには憚られ、“舞台”という単語のオブラートに包んだのではないかとすら思います3。これを観て“舞台”が楽しい、と思えるのか、あるいはそう思ったことを“舞台が楽しかった”としてしまっていいのか。物凄く引っかかりが残ります。
あるいはこういったジャンルは実は確立されており、私の知らないところで一大クラスタを築きあげているのかもしれない。現に、客層はいつも観るような“芝居”の層とは異なるように見受けられました。逆に言えば、こういったジャンルと小劇場等との間には客層の出入りは無い、なにか文化的な断絶もあるのかもしれません。
各々のネタは“あるある”です。ですが、そこで終わります。何かそこから立ち上がってくるテーマのようなものはなく、「ほぼ実際にあったエグい女たちの物語」をそのまま再生しているに過ぎない。これも、舞台演劇というには厳しいなと思った理由です。
女性演出家4が、例えばこのオムニバスの中からネタをサンプリングして、90 分から 120 分の一本の芝居としてテーマを立ち上げれば、“芝居”になると思います。そういうのなら観たいけど、まあいつも観ているかそういうのは。
つまりこれは“舞台”であって、“舞台演劇”でも“芝居”でもないのでしょう。「舞台『エグ女』」という表記も散見されるので、制作側の意図と、私の解釈も一致をみます。アウェイだっただけなのでしょうね。
ところで私は何故これを観ようと思ったかというと、チーム女狐の中村繪里子が目当てだったからです。『サラブレッドな女』『壁』『したたかな女』の 3 シチュエーションにしか出演していませんでしたが。オムニバス形式で区切る、ということをやっているのも、120 分ぶっ続ける基礎体力のない(片手間な)演者を板の上に出すためには、避けては通れない構成なのだなあと思いました5。ただ『サラブレッドな女』でパチンコ依存症の女を演じる中村は、間違いなく色々な意味で非常に良かったです。
コントとして割り切れば、笑える演目は確かにありました。『輝美』での日本エレキテル連合 橋本の演技とか。他には『価値観が違う女』での秋月三佳に代表される、いわゆる普通の役者がコントのようなことをやるときのギャップも、悪くありませんでした。
しかし冒頭に引用した「女子ってさ~」の、あのコピーで、作・演出が男性作家ってのは、やっぱりどうかと思うな。
日時
- 開演 2018-02-27 19:00
- チーム女狐回
- 於 CBGK シブゲキ!!
出演
番号は出演オムニバス演目に対応。
チーム女狐
- 中村繪里子:3、10、14
- 橋本小雪(日本エレキテル連合):5、7、14
- 柊瑠美:6、8、14
- 秋月三佳:2、13
- IZUMI:9、12
- 植田紗々:4、12
- 大坪あきほ:2、12
- 佐野いずみ:4、8、13
- 中上サツキ:7、10
- 納富有沙:1、11
- 早咲心結:1、4
- 藤原珠恵:1、9、14
- 松嶋沙耶花:1、11、14
- 丸山莉奈:5、8、12
他
- 朝日奈芙季:7
- 小西はる:3、6(W キャスト)
- 牧内莉亜:6(W キャスト)
- 湊梨紗:13
オムニバス演目
上演順は、1 → 2 → 3 → 4 → 5 → 6 → 10 → 8 → 7 → 9 → 11 → 12 → 13 → 14。
- 『ループする女』
- 『従う女』
- 『サラブレッドな女』
- 『犯された女』
- 『架空請求の女』
- 『姉妹』
- 『輝美』
- 『さよならのスイッチ』
- 『ニコイチの女』
- 『壁』
- 『ATM の女』
- 『ヨガの女』
- 『価値観が違う女』
- 『したたかな女』
-
『女体シェイクスピア 006:迷走クレオパトラ』 / 柿喰う客 - 劇 、 『女体シェイクスピア 005:暴走ジュリエット』 / 柿喰う客 - 劇↩
-
演目の半分ほどは、狭義のコントにはあたらないシリアスな寸劇ですから、コントと括るには不適切ではあるかもしれない。↩
-
エグ女、であり、女の実話を切り取っているという体なんですから。↩
-
でも、同じ声優の中原麻衣なんかは がっつり 2 時間のフル尺芝居に出てた けどなあ。↩