公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『RENT』 / ブロードウェイミュージカル来日公演

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2 日後に観る 『アラジン』 と共に、ミュージカルであり、かつ 『スーパーストライク』 のパロディパート元ネタでもあります。

ブロードウェイミュージカルの来日公演ということで当然、台詞は全編にわたって英語。ステージの両脇に字幕表示用ディスプレイがあり、何らかの同期によってリアルタイムに日本語字幕が表示されるため、言語の壁は問題ありませんでした。

レント (ミュージカル) - Wikipediaja.wikipedia.org

ニューヨークはイースト・ヴィレッジにおいて、家賃(Rent)を払えず物件からの退去を迫られるほどに困窮する社会的弱者たちを描いた物語です。ただし舞台背景は本作が執筆された 1990 年代に基づいているため、LGBT を取り巻く世相やエイズに対する認識(特に近年の見解とは異なって劇中では未だ「即、死に至る病」であるという点)、あるいはイースト・ヴィレッジという街そのものが、四半世紀前という“そうそう最近でもない”世代のもの。ヘッズ(RENT-Heads)と呼ばれる熱狂的ファン層を擁する点や、役者が登場するだけで拍手喝采(なんか新喜劇みたいだなあと思ってしまいました)といった反応からも、日本だから(ニューヨークを知らないから)今なお“現代”を捉えた演劇として評価されている、なんてことはなさそう。むしろ、ある種の懐古趣味を内包した伝統芸能の色味が強いように感じられました。

もちろん当時としては画期的な社会/世相や劇中歌ジャンルの取材だったことには違いないでしょう。クライマックスが主要人物のエイズによる死であることも、深刻なリアル“だった”のかもしれない。だからこそ、2010 年代も終わる今日において、古典とも今現在ともつかない立ち位置となっている本作を観客はどのような対象として捉え、何を受容しようとしているのか、というのが気になってしまいます。テイクホームメッセージを得るための題材として、古典でも今日でもないこの限定された過去の世相を提示されても、その時代その状況に生きていたとはいえない自分には割り切りも現実感も湧き得ないのかなと思いました。

『Seasons of Love』は第 2 幕の冒頭だけでなく、第 2 幕の全編にわたってモティーフが変奏される、かなり重要なナンバーでした。

劇伴は舞台下手側、“賃貸”1 階の小部屋に半ば詰め込まれたような形で陣取るコンボ(バンド)による生演奏で、彼らは非常に良いパフォーマーでした。劇中歌のジャンルも、ヒップホップ以外はほぼ網羅していたのではないかというくらい多岐にわたっていて、いずれもオルガンが最大限活躍できるようなアレンジだったのが彼らのバンド編成に刺さっていました。これがブロードウェイの座組であることをダイレクトに堪能できた、個人的には最大の醍醐味だったかな。

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