『バー公演じゃないです。(再演)』 / 別冊「根本宗子」第6号
あたしのこと、よくわかってんじゃん!!(ぐっ!!)
別冊公演 | 月刊「根本宗子』オフィシャルサイトgekkannemoto.wixsite.com
そのバレリーナの公演はあの子のものじゃないのです。
腐れ縁と独善的後悔が年月を超えて収束する小話。
中学校の修学旅行の班決めであぶれた、わたなべ[演:根本宗子]、ほりい[演:長井短]、たかはし[演:青山美郷]、ゆめかわ1[演:石澤希代子]。あぶれ者どうし、班を作る。旅行先のディズニーランドに異常な執着を燃やすほりいが混ざっていたことで、プランニングが過熱する。
その腐れ縁を大学まで持ち越す 4 人。
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- 「ぴゃあぁあぁ~。たーぁのしぃ~い!」と叫びながらふらつき回り、スマホの画面を擦りまくる。
- 指の動きが止まらない。「こわい…」「だれか…とめて……」
- ゲームコインが底をつく8。
- 「私にともだちはいないのか」「生きている者はいないのか」と暗く呟きながら徘徊。
- 休憩に入ったルームメイトをスマホゲームに引き込む。ユーザー紹介によってコインが入る9。
- 人数がひとり増えた状態で「1」へ。4 人になるまで繰り返し10。
- 誘える友人がいなくなった。もうスマホゲームで遊べないのか。
- 「課金」
- 課金は素晴らしい。永遠にゲームができる。
- 全員がスマホゲームに狂い、バイトの遂行すら困難になる。コールド・ストーンを始める前よりも生活は困窮する。
「SPEED」を名乗り、4 人で身体を売って生計を立て始める。中学の頃から性に貪欲な片鱗を見せていたゆめかわが覚醒し、ユニットのパワーバランスが崩れたことでついに、彼女たちの共同生活は破局を迎える。
残ったのはわたなべとほりいだった。バレエの公演を観に行くことになった 2 人。異常に感銘を受けるほりいを見て、わたなべは幼少の頃のトラウマを思いだし会場を飛び出してしまう。
わたなべは幼稚園受験で、同じ受験者であった女の子[演:青山美郷11]と喧嘩になり、その長い髪を不意にばっさりと断ってしまった。バレリーナだったあの娘は、その髪を喪ったことで夢を断たれてしまったのではないか?以降、わたなべは友達を作ることもできず、中学校で班にあぶれ、ほりいたちとの腐れ縁が始まったのだ。
泣きながら楽屋に飛び込もうとするわたなべ。今日見たあの娘[演:石澤希代子12]が、あの日のバレリーナじゃなくても構わない。心の中に押し込めていたこのトラウマを吐露し、けりをつけたい。救われたい。わたなべの気持ちをよそに、隣で笑っていたほりいが突然、過去を口走る。幼稚園受験の日に知らない女の子に髪を切られたことがある13。好きじゃないバレエを辞めるきっかけになって、よかった。相手がわたなべだったと知ると、ほりいは彼女に感謝する。ありがとう!
わたしはあなたに謝りたかったのに、なんで感謝されなきゃいけないの?!
じゃあせっかくだから謝って。バレリーナになってたかもしれないし。
あん時ああならなくってもどのみち途中で辞めてたんだろ!?
「さっすが友達!あたしのこと、よくわかってんじゃん!!」
👍
板の上で始終くねくね蠢く長井の動きは運動神経皆無の人間そのもので、絶対バレエとかできなさそうなのが、とても良い14。その脇で終盤、隠し特技のようにバレエを披露するきよちゃんも、とても良い。
対人観のトラウマをこじらせていく女の子と、それがねじれにねじれて友情の肯定に着地するラスト。くるみ割り人形のワルツに乗って終わる小気味のよいオチ。この頃の根本のバレエ推し演出は、どれも外しがない。
縷縷夢兎の舞台装飾15が本当にかわいい。対象外と思われる層からぶっ込むのもあれですが。最近、気になってます。
情報。
『その(バ)レリ(ー)ナの(公演)はあの子のもの(じゃない)の(です。)』
↓
『バー公演じゃないです。』
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ゆめゆめかわいいピンク色。↩
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年間パスポート。↩
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確か「カントリーベア・シアター」くらいしか観に行けなかったみたいな、そんなオチ。↩
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その日の舐め分が終わったら、手でパチパチとチャックするあのポリ袋に入れて保管。↩
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ひどい。↩
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楽しくなくなる。↩
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楽しくなる。↩
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70 分程度の上演時間のうち、おそらく 5 分以上を一連の青山美郷のスマホ擦りと「ぴゃあ~」に割いている。いちばんの地味子みたいなルックスに仕立て上げられた青山の奇怪なスマホ中毒の動きはギャップを誘発するが、それにしても冗長だな?…↩
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たかはしではない。↩
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ゆめかわではない。↩
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ギミックにもなっている。↩
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初演時の装飾が公式から確認可能( http://gekkannemoto.wixsite.com/home/history3?lightbox=dataItem-iqm0z7b6 )。今回の再演での装飾も、この世界観に準じていた。↩
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キャスティングは初演(別冊第 5 号)と同一。↩