『超、今、出来る、精一杯。』 / 月刊「根本宗子」第11号
『今、出来る、精一杯。』 の舞台装置 × 清竜人 25 × 女の子の承認欲求 = …
登場人物
経営の危うくなってきた埼玉のスーパーが起死回生の策として企画した、ご当地店員アイドルグループオーディションにおける関係者達。
女の子
果鈴[演:尾崎桃子]
自分が一番かわいい女の子。プライドが高く、試食プレゼンスによるセンターコンペティションでは全くウインナーを販促できず、一番に脱落する。
小夏[演:石橋穂乃香]
出戻ってきたところ、導かれるようにしてオーディションに。どこにでもいそうな、平凡な女の子。
志歩[演:あやか]
ホットパンツに金髪の似合う、ギャルな女の子。思春期はアイドルに憧れていた。石川出身。
恵理子[演:梨木智香]
三十路に近い女。志歩のツテでオーディションにやってきたようだが、合格した上にセンターコンペでは圧倒的なウインナー売り上げを叩き出し、優勝する。
由梨[演:根本宗子]
地下アイドル崩れの女の子。出勤日にマスクをしてやって来ては、“病気”でも持ってるのではないかと女子グループからの顰蹙を買う。現場叩き上げの強かさを持つ。
ジュリア[演:長井短]
やたらとハイテンションにクネクネ動き、片言(?)でまくし立てる。ハーフの女の子、らしいが…。タレント志望。
静香[演:新谷真弓]
アラフォーの女の子(?)。職業アイドルへの意識は随一で、当然、家庭との関係をかなぐり捨ててやってきた。
その他
店長[演:加藤啓]
スーパー経営者で、今回の企画立案者。
サゲジマ[演:宮下雄也]
スーパーの店員。果鈴の男。
あらすじ
女の子全員(静香を除く)が、店長の子どもを妊娠する。
やばい
やばい。
潰れそうな地方のスーパーが企画したご当地店員アイドルオーディションに大したことないきっかけで応募し合格した瞬間だろうが、否が応にも芽生える承認欲求から全員がセンターを狙い始めたあげく店長と寝ればセンターを獲れることが分かった瞬間だろうが、他人にはどう見えようとも人には精一杯、輝ける一瞬があるということ。
数か月後にはメンバー全員(静香を除く)が妊娠していようが、それが原因で店長が死に追い込まれようが、あるいは遺体に向かって懸命にアンコールをしても店長は帰ってきはしないが、その時に出来る精一杯をやれば、必ず報われる瞬間がくるということ。
それでは最後の曲、きいてください、『出産カーニバル』。
埼玉の小さなスーパーから出発したアイドルグループは、解散コンサートで全員(静香を除く)が店長の遺影もちつつパンクチューン1をバックに絶叫しつつ出産する。舞台暗転。
再び明るくなった板の上では全員(静香を除く)がおくるみに赤子を抱いて、
一夫多妻アイドル!
全員妊娠!
メンバーから殺人犯も出た!(静香)
ステージ上で全員で出産もした!
わたしたち今だれも追いつけない最高のアイドルやってんじゃん!すげえ!!
これか。
ここまで彼女たちを突き動かしたものは何なのか。解題するように最後、由梨、もとい根本が叫ぶ。
あー!!Yahoo!ニュース に載りてえー!!
おそらくこの瞬間に“芝居”の世界に両足を突っ込んだ。辛うじて生きていたであろう先入観も、期待していたモラルも、すべてぶっ壊れた。
はじまりである 『グローブ・ジャングル』 への根本の客演も、その後の バー公演 鑑賞も、すべてここに集約された。
ブス、ババア、メンヘラ、…。謗りの方を向いているようで向いていないカウンター。女の子の自意識が、テアトル BONBON をアッパーに殴り飛ばす。
音楽
『ラブ♡ボクシング』 / 清竜人 25
ウインナー販促コンペの際のアイドルたちの持ち曲として。両手にウインナーの袋を持ってあの振り付けをやる。
『プリーズ...マイ...ダーリン♡』 / 清竜人 25
センターを取りたいがために店長に言い寄る女の子たちが舞台上に全員(静香を除く)集合し、ハーレムを現出する。さながら元ネタグループのような絵面で店長と女の子たちが本曲を歌唱する2ことで、“メタファー”を為す。
日時
- 開演 2015-11-06 19:00
- 於 中野テアトルBONBON