公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『ちょっと、まってください』 / ナイロン100℃ 44th SESSION

enterstage.jp

  • 「ナンセンス・コメディ」ではなく「不条理喜劇」として作った、らしい。

    • その志向の違いは、このへんのジャンル分けに疎いためわからない。

    • 3 時間のうちのかなりの部分は、不条理さ故のシリアスな空気感。喜劇という 2 文字から安易に想起されるようなものではなく、シリアス・コメディのような位置づけ、空気づけのような。そういう意味では前回に観た 『消失』 と、肌触りは似ているかもしれない。

    • 別役実を明確に意識したオマージュであるとも明言されている。そして、別役演劇を観たことのある人間ならこの芝居の志向するところがすぐに判るという指摘が、量をこなす芝居ゴアーの観劇ブログに存在する1

  • 際立っていたのは乞食の父[みのすけ]の不穏さ。シリアス側の不条理は、みのすけ一人で引っ張ってっいたといってもいいほどとにかく気味が悪く、観ていて不安になる。

    • 彼の声質によるところも大きいのだろう。

    • 雨の演出が似合っていた。

  • 対照的に、笑いの側は金持ちの父[三宅弘城]の独壇場。配役も纏う雰囲気も両極端に振ったな。

    • 書いてて気づいたけど二人ともドラマーだな。
  • 時間軸は破綻しつつもループを示唆するような構成。複数回鑑賞しつつメモ片手に観ないと、細かいネタや展開の方に注意が持っていかれて、因果がどう成立しているのか(あるいは成立していないのか)に関する考察は置いてきぼりになる。

    • メモが不要なほど明確にそのループからはじき出される、ペテン師[マギー]とメイド[小園茉奈]という異物構造はある。ループの中でペテン師は死に、メイドも退場する。この 2 人だけなぜ物語から排除されたのか?

      • ペテン師は、その役名に反して劇中もっともマトモな人間であるように描かれる。メイドに関しても、劇中の立ち回りはそれに準じる。そのくらい金持ち家族は破綻しているし、乞食家族は悍ましい渦を背負っている。ペテン師は舞台と観客を橋渡しする“狂言回し”でありながら、(もう一度くらいちゃんと観ないと断言はできないが)金持ち家族と乞食家族が織りなす不条理な応酬に、本質的に介入できていなかったように思う。狂言が回せていないのである。“ペテン”という属性が霞むくらいに、板の上における“現実”は狂っていて、秩序がなく、因果律さえ有耶無耶。そのような現実の前には、“ペテン”が敗ける(敗けた)ということかなと思った。あるいは、その板の上の現実というのは、現実世界の現実であろうとも。
  • 鑑賞面については、どうも冗長な印象が拭いきれず。途中、だれるシークエンスが結構あった。2 幕構成は必要かな?もうちょっと端折って 1 部構成で突っ走れなかったかな?というモヤモヤは残る。

  • タイトルにも使われている「ちょっと、まってください」という台詞が劇中に 4-5 回ほど持ち出されるけれども、この台詞の使いどころについても、何故そこで使ったのか、が一度の鑑賞では理解しきれない。小難しかったな。メディア化されるのであれば3(複数回鑑賞に関する個人のポリシーに反するけれども)観なおしてみたい程度に引っかかりのある、気になる芝居ではあった。

  • 開演 2017-11-25 18:00

  • 本多劇場

  1. えっ、ソースを忘れたのかい。

  2. そもそも、プロジェクションマッピングの類を統一的に使いこなせた芝居は、(ナイロンに限らず)記憶にある限り多分まだ観られていない。

  3. 【2018-11-22 追記】されてた。商品ページにあらすじも書いてある。 http://www.e-fanclub.com/cube/webshop/shohin.asp?Shocd=CU-CU-0450