公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『罠』 / 演出: 深作健太

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これに限った話ではないけれど、「二度観に行くことで本当の面白さがわかる」みたいな売り方は誠実ではないなと思う。

特にこのくらいの公演規模/プロデュース/集客力になってくると、当日券なんかはあまり期待できるものではない。つまり二度目を鑑賞したいと思ったときにはもう遅くて、最初から複数公演のチケットを取ること前提で、公演数ヶ月前から動かないといけない。芝居は生ものだから、一度のがしたらもう観られないといっていいわけ。しかしながら、もう一度観に行く価値があるかどうかを判断できるのは、一度観た後でしかないわけだから、二度観ることを前提としたような話づくりやプロモーションには疑問を抱かざるをえない。

本作はラストのどんでん返しの存在を前面に押し出しているので、そういった類の演劇にあたる。観客もそれは意識するわけだから、意表をつくような展開の存在を頭に入れつつ鑑賞に臨むわけだけれども、本作に関しては少なくとも、開幕以降の話の流れからそのタネを予測するのはかなり難しい。台本における冒頭よりもさらに前の時間軸にトリックが仕込まれている可能性を考えないと、正解にはなかなか至れなさそうな憎たらしい構造だった。

平成仮面ライダー俳優が 2 人、出演している1。こういうイケメン俳優がストレートプレイに挑戦する類の演劇は、本や演出がしっかりしていれば…あるいは最悪のケースでも本だけ太ければ、けっこう観られるレベルになる。本作も、話の内容自体は緊迫感をうまく引っ張るもので、ライダー俳優を含めた座組もそれをうまくコントロールできるほどに熟していて、内容自体を楽しめないわけではなかった。演者自身に余裕がないと、逆に緊迫感というのは出ない。主演の加藤和樹は『罠』の主演が 3 度目2だったというのも大きいのだろう。アフタートークでも余裕の男の風格を漂わせていて、かっこよかった。

構造的に、一度目と二度目とでは徹頭徹尾、見方の変わってくる作品であるということになるので、話の緊迫感や役者の良さは置いておいて、鑑賞のさせ方のスタンスは正反対。映画みたいに時間的に限定されない頒布手法で提供されるのであれば、まだマシなのかもしれないけど。生ものじゃあねえ3


  1. 主演の加藤和樹仮面ライダードレイク、助演の渡部秀仮面ライダーオーズ

  2. 深作演出では 2 度目。

  3. 【2018-12-20 追記】それに、本当に良い芝居はそんなプロモーションしなくたって、心が張り裂けそうなくらいに二度目を観に行きたくなるものだよ。