『キルミーアゲイン』 / 劇団鹿殺し 活動15周年記念公演
15 周年記念公演と銘打たれただけあり、劇団の半生をアテ書きしたような人物設定と物語(劇団を立ち上げる話し)設定。
入交×オレノの劇中歌の最後に登場人物の臓物がビュッと飛び出て、というより帯回しのように引き出してシークエンスを〆る。しかも天丼。ひどい。これは劇団恒例のお約束か、あるいは過去の公演でのネタか何かだったのだろう。
- 『山犬』 はスピンオフ公演ではあるものの実際、登場人物が臓物をあれこれするシーンがあった。あちらは少なくとも使い方としてグロ/シリアス狙いだったが。
本のアテ書き感の強さといい、本作でデビューの客にとってはなかなかついていけない部分もあったが、そこは 15 周年ファンサービスといったところか。
先述のようにスピンオフ公演は観ていたり、それ以外にもオレノのような俳優単位では他の公演でも観ていたりと、接点はあった。ただし鹿殺し本公演はこれが初なので、詳しいところはよくわからずじまい。
こういったダイジェストは完全に古参サービスになるのだろうか。初心者に対しての次の 5 年、10 年に向けてのテンプレ紹介…にはなり得ないだろうなあ、さすがに。
東日本大震災以降の小劇場の台本に少なからず影響を与えているであろう“災害”の要素が大きくフィーチャーされている。中でも本作の鉄砲水のシーンは、災害の直接的な演出としては、観てきた中でも具象的かつ緊迫した演出だった。
- 動く大壁がぐるぐる回る。暴風と雨。一瞬の静謐。
作曲ができるメンバー、ブラスバンドという集団を劇中に巧く成立させることもできる楽器担当の若手層、2 時間強とは思えない密度感。客演を加えた座組としても、非常に品質の高いものが観られた。
要所に置かれた新感線のサンボ(河野まさと)さんが、押さえるべきところを台詞ひとつで押さえる。引き締まるんだよな、場が。
俳優としてのオレノは何度か客演で観てきたけど今回の、このホームでの演技は素晴らしかった。
音楽を取り込んだ演劇。しかしながらミュージカルのようにシームレスに浸食するような感じではなく、ところどころで不連続に、テンションに対してアクセントをつけるような塩梅。一方で劇中のブラスバンド隊がそうであったように、ストーリーの根幹に関わる役(集団)としても活きる。
芝居の中身は劇団名ほどアングラではなかった。『山犬』を先に観ていたのもあって、もっとえぐいと思ってた。ギャグ/シリアス、静/動、会話/音楽、といったコントラストがついている本に、客演と一体化した座組、そして円熟の演出。年始一本目としてはかなり良かった。
- 作 丸尾丸一郎
- 演出 菜月チョビ
- 音楽 入交星士 × オレノグラフィティ
- 開演 2016-01-16 14:00
- 於 本多劇場