『レミング ~世界の涯まで連れてって~』 / パルコ・プロデュース 演出: 松本雄吉(維新派)
音楽劇「レミング〜世界の涯まで連れてって〜」 | 北九州芸術劇場www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp
2015 年は、寺山修司生誕 80 周年。その企画のうちのひとつ。
タップダンス的な 8 小節のリズムモチーフが存在し、道行く通行人を演じる黒子たちが場面転換となる要所要所にて、交錯する雑踏を描き出しながら足だけは一斉に靴を鳴らす。
ザッーダダダッダッダッダッー、ザッーダッダッダッー、ザッーザラダダッーッダッダッー、ッダッダッダッーダダッ。
- うろ憶え。
進行は「ヂャンヂャン☆オペラ」と呼ばれる手法に則っておこなわれる。
主要な台詞は 7 拍子の変則ビートに乗るよう整形され、そのビートの上で役者たちは軽妙に掛け合いを重ねていく。
維新派におけるスタンダードな表現スタイルとのこと。
二人のコック見習い、タロ[演:溝端淳平]とジロ[柄本時生]が住んでいる下宿の壁が崩壊して、隣の部屋とつながってしまい、大家に直してもらいに行く。
壁の崩壊による夢現の混濁と、それに翻弄される人間の困惑、というぼやっとしたテーマしか汲み取れなかった。
ラストシーンに用いられる紙吹雪。おそらく銀紙で作られたその吹雪は、照明をランダムな周期で反射する。このとき、舞台の手前(客席側)であるほどフレームレートが落ちるような錯視の効果が現れて、奥行きに対して時間がずれていくような感覚が、混濁の感覚を極限まで押し上げていた。
- 紙吹雪にこういう効果があるとは気づかなかったし、もちろん初めて体験した。恰好が良かった。
音楽、ギタリストのおじさんが舞台下にひとりすわっていて、ギターの生演奏と同時にトラックの同期もやっていたように見えた。
- この方が内橋和久だと思う。今回の「ヂャンヂャン☆オペラ」を根幹から作り上げた立役者。
鑑賞後に思うこととしては、翻訳劇を観た感触に似ている。 時空の旅版『ゴドーを待ちながら』 が奇怪な崩しのアプローチでストレートプレイのテンポを変容させていたのに似ているからだと思うのだけど、『レミング』も同じように、別の演出で観てみたいと思った。
秋月三佳が通行人役で出演していたのを確認。
作 寺山修司
演出 松本雄吉(維新派)
2015-12-27 13:00
於 北九州芸術劇場 大ホール