公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『三文オペラ』 / 演劇・時空の旅シリーズ#8 演出: 永山智行

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開演直前に急きょ公演中止となったため、正確には観劇記録ではない。

開演時間になったものの公演は始まらず、そのしばらく後に演出家と館長が壇上に現れ、「ドイツの著作権管理団体との上演契約に際して、編曲の改変禁止を条項に盛り込んでいたにもかかわらず、フルオケのスコアをコンボ向けに書き替えてしまい、上演直前になって法的措置を仄めかされた」といった旨の経緯説明、ならびに公演中止の宣言と詫びがなされた。

そもそも『三文オペラ』の劇伴を担当した Kurt Weill の楽曲に関しては "Moritat(=Mack the Knife)"、"My Ship"、"Speak Low" 等がジャズスタンダードナンバーに落としこまれている。つまり楽曲単位では、広義の編曲は世界中のジャズバーで行われているといっていいはずである。もちろん商業公演でもそうであるはずだが…

まして "Moritat" なんかは、この戯曲が出自である。

スタンダードナンバーになるほど手垢がついた楽曲が、オケ編成まで含めて一切の改編を(Kurt Weill Foundation によって未だに)制限されるような戯曲に由来するという部分に、著作物にかかわる権利の極めて曖昧な部分が現れている感じがする。

それとは別に、Weill も Brecht(シナリオライターのほう)も死後 50 年が経過していながら、なぜ外国に上演契約を求めるに至ったのか。契約をしていながらそれを反故にするような改編曲を進め、上演直前になって通告を受け涙するという運営側のお粗末さも、一体なんだったのか。

演出家と館長の謝罪の後に始まった役者陣による即興ゲリラセッションもお粗末きわまりなかった(そんなジャムの練習なんて勿論やっていないだろうから仕方ないけれど)。そんなものを観に来たわけではないので、こちら側の気分も優れなかったが、板の上の女優は咽び泣いてるわ主演俳優もセッション中にどんどんメンタルおかしくなっていくわで、一番つらいのは座組の役者たちなんだろうなと思って、なんとも言えない気持ちになった。解散。

追記

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その後、劇場側と上記団体との交渉の末 2017 年 12 月に和解成立、2018 年 6 月に改めての上演が決定。 観に行った