公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『あの子と旅行行きたくない。』 / 超、リモートねもしゅー

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劇場に行けなくなった。行っても芝居なんてやってない、閉まっている。

最初のうちは選択の余地があったし、今となっては完全に「トラディショナル」と化す可能性すらある表現へ、役者たちも身を委ねることができていた。これは書き残しておかないといけないと思うんだけど、そういうふうで決して不連続に状況が一変したわけではないということ。株式市場とか為替とかも追っていて、そこでもそうだったように、空気は少しずつ少しずつ「入って」きた1。だとすれば、言ってしまえば本質的には単なる時代の変化なのかもしれなくて、これってすごく普遍的な話なんじゃないか。確かにすさまじい勾配ではあったんだけど、でも不連続ではない、なかった、っていう。移り変わっていく世の中で何かを頑なに一定ラインに維持しようとして、気がついたらすとーーんと強制ロスカットされるのだとしたら一体どこに誤りがあって、なぜ置いてかれるんだろう。どうやったらそれを防ぐことができる?

連続的な浸食の感覚とそれに合わせた自らの変化の必要性を、意識的か無意識的かは別として、普段から追いかけている人たちが持っていて、この段階で既に生きていくためのあたらしい表現スキームを立ち上げていっているという状況は、面白い。そのスライドに立ち会えている状況は、確かに困難で悲惨な状況も見え隠れはしているけど、でも楽しい。受信できているだけでも、なんかよくわからない肯定感みたいなのがある。

360p のこの配信映像のローファイな感じすら、いま見える他人の解像度のリアル。でもこの決して高品質とは言えないビットレートの流れに乗って、受け取った側がどのようにでも増幅できる様々な感情の想像余地が、そこにある。この作品だけじゃない。一見ただ喋っているようにしか見えないインスタライブコラボレーションに。投稿日時も時間長もまちまちな個人の音声配信に。地下アイドルの自炊に。「むかし」のようなものが戻ってくることを信じて、それまで待つ、では本当に取り返しのつかないことに加担しかねない。今、受信しよう。そして対価が払えるのなら、投げ銭ができるのなら、今やろう。時空が不可逆だということ、未来は現在の先にしか訪れ得ないことを、忘れないように。

あ、作品の内容は古き良きバー公演の空気(一回しか行ったことないけど)を纏っていて良かったです。終盤の畳み掛け、「あの時点」を超えた先にある展開は、祈り。


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  • 作・演出 根本宗子
  • キャスト
    • 根本宗子:太田ちゃん
    • 椙山さと美:田上さん
    • 安川まり:桃井ちゃん
    • ゆっきゅん:相川さん
  • 劇中楽曲
  • 配信開始 2020-04-17 18:00

  1. 『根本宗子と長井短オールナイトニッポン0 』(2020-04-12 放送回)でも同じようなことを言っていた。