公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『箱』 / ストアハウスカンパニー

gekibaka.com

虚構の劇団から渡辺芳博と森田ひかりが参加していたので観に行った。

演劇という括りに入れるならば無言劇。劇というよりはダンスの範疇で、このあたりになってくると線引きに詳しくないのでわからないが、コンテンポラリーダンスの一種か。

役者の身体、および 40cm × 40cm × 100cm 程度の木枠の“箱”のみを使った表現。その場その場で一定の動作ルールが敷かれ、それに則って役者が“箱”を持つ、置く、積む、除く、といった動きを繰り返して構造物を作ったり、出来上がった構造物に対して何らかの干渉を繰り返しながら“箱”からのフィードバックを身体に取り込んだりしていく。

どこまでが書き譜で、どこからが役者の判断に委ねられたアドリブなのかわからないが、リフミュージックの上でミュージシャンがアドリブを打つ感覚に近いようなものを感じた。

ルール毎に個々のプレイヤーがフィーチャーされる時があり、他の役者の動作ルーチンから外れた独自のテンポで動作をするところなんかはポリリズム的で、無言かつ無音楽であるのにやたら音楽的だなとも思った。

木枠の“箱”は打ちっぱなし感のあるもので、精度よく作られてはいない。それ故に“箱”を組み上げて作った構造物は不安定となり、構造物の不安定性によって役者の動きにミスやディレイが入り、それを元に戻していくフォローの過程に不規則性が出てくる。この動作パターンサイクルの綻びと、それがどのように修正されて元のルーチンに収束していくか、みたいな緊張感がこの公演の面白さのひとつであった。

ただ、その緊張感が 90 分つづくので、観る側も非常に心身を酷使する。

終盤、様々な動作を立て続けに消化して汗だくになった役者たちが服を脱ぎだして、床に脱ぎ散らかした別の役者達の服を無作為に着直していくというシークエンスが入ってから、雰囲気が一気にグロテスクな方向に飛んで良かった。服のシャッフルは男女を問わず、女物の肌着を男優が懸命に着用しようとするあたりで何とも言えない笑いが出てくる。

今回の『箱』は「ストアハウスコレクション マレーシア週間」という企画における日本側の演目であり、同時上演でマレーシアからのゲスト劇団 2 つ1が、彼らオリジナルのパフォーマンスを披露していた。この 2 団体の演目にはストーリーやメッセージ性が明確に存在していたようだが、個人的にはこのようなコンテンポラリーなパフォーマンスでは『箱』のように身体や要素にのみフォーカスした、メタな作品の方が観ていて面白いと思えるのかも。

鑑賞履歴

ストアハウスコレクション マレーシア週間(2015-01-24 昼公演)

  • ストアハウスカンパニー 『箱』

    • 開演 2015-01-24 14:00
  • DPAC Dance Company 『WExplode』

    • 開演 2015-01-24 15:30
  • 於 上野ストアハウス


  1. EN Theatre Production + ASWARA および DPAC Dance Company の 2 団体。上演は交代制。