公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『宇宙人はクラゲが嫌い』 / 劇団かもめんたる

natalie.mu

お笑いコンビの人がなぜ芝居を打つのかというと、それこそコントでは表現できないテーマだったり台詞だったり、あとは出せるキャストだったり。色々とあると思うんだけど、今回については森桃子や森田ひかり、あるいは増澤璃凛子といった「お笑い」ではない空気を纏う1役者たちの姿を板の上に視て、やっぱりそれを実感したと思う。換言するならば、個々のバースの組み立ては、これはそのままコントなんじゃないかみたいなところがあって。男が尻を突き出して屁ェ、屁ェ、とやっているのを見て、事前情報は何も持たないまま来たけどこの人はコントの畑の人だ、というのが物凄くわかりやすい作りになっている、そうしたら屁ェの人は本当にかもめんたるの片割れ、槙尾ユウスケだった。

絵本的、寓話的なテーマ性という意味では、森桃子演じる絵本作家まわりの話がメタ的でありながら、それとはズレた軸線で八嶋智人岩崎う大うどん屋兄弟確執(?)という流れが本筋を形作る。イヤイヤな宇宙人は、クラゲを憎みつつも都市伝説のまま。好きなように生きてるクラゲは、うどんの具にされたりしつつも、超個体としては地球に繁栄を築き、人間にも当たり前のように認知され、あげくは八嶋の肉体を乗っ取って実際に人間社会へと進出すらしている。同属をうどんに練り込みながら。

結局それが「お前はなぜ自分を生きない?」という本作のテーマに通じていて、好きに生きているクラゲが地球で生命を謳歌している2というのがその、ひとつの台詞に収束して。そしてまたそれが、お笑いコンビでもありながら芝居という表現も持つ「かもめんたる」であり岩崎であり、あるいはそこに出演する八嶋であったりマスザワであったりのスタンスなんだな。観ていた時は「コントやんこれ」という気持ちが強かったけど、書いてるうちに良くなってきた。お笑いでは出せない包括なのは間違いないし、八嶋がこういう方向に着地しているのも、なんなら八嶋がこういう小劇場に出てくるっていうのもびびるし3、クラゲの芝居だ。

マスザワはマッチ棒みたいな長~い手足でバランスで、衣装も相まってお人形さんみたいな佇まい。佇まい4で一番びびったのは四柳智惟ですが…。

  • 作・演出 岩崎う大
  • 開演 2019-05-12 14:00
  • 於 赤坂レッドシアター

  1. 例えば森桃子の笑い、というのは存在しうるけれど、それは小劇場の匂いか。

  2. けれどもクラゲの繁栄はあくまで超個体としての幸せ。うどん粉にされるクラゲの「個」は本当に存在しないのか、うどん粉にされる個体の存在を人間社会に当てはめると、「自分を生きられない」人あってこそ、その上に超個体としての人の世が成り立つのではないか、という気もして、ちょっと心地は悪い。全ての人間が自分を生き始めたとき、クラゲはうどんを打たなくなるのだろうけど。

  3. 【2019-11-07 註記】しかしそれこそが八嶋たっての願いだったというのだから( https://note.mu/udaikamomental/n/n672df795c5fb )。

  4. というか体型、というか背中、が台本通り本当にペッタンコなこと。