公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『エアガール!』 / トキヲイキル

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(女性)アイドルグループとエアガールとの間には「女性の職業領域」というようなオーバーラップしたイメージがあるのかもしれない。それが今でもシンパシーを喚起し得るのかどうか、受け取り方は様々だと思うんですけど。

予約されたパーティションの中で保障された社会参画。それすら存在しなかった状況においてその場所を確保するのは、ゼロをイチにする大きな苦労を伴ったはずで、昭和初期の日本における女性の(公民権獲得に先立つ市民権レベルでの)社会進出のきっかけとして「エアガール」のエピソードは、重要なターニングポイントであることには違いありません。ただ、女性の職業であるというイメージの固着も今となってはどうなんだというか…この感覚に関連するような演出の仕方でちょっと勘ぐりがあったんだけど、男性が視覚的に出てこないんです、この芝居。民間航空の父こと長岡中将は声のみで出てくる。終盤になってようやくその正体が公になる謎の老紳士が幕開けのシーンから鶴翼みたいなヒゲたくわえて出てきたら、伏線的にもビジュアル的にも芝居を食ってしまうというのはあるかもしれない。グループの文脈からして「ガールズユニット」なので、その出さないという選択はまあヒゲの次元の配慮ではないと思いますが…。ただそれにしては、脚本も演出も男性がやっていたり、配信とか観てるとわりと Zoom に裏方の男性プロデューサーが出入りしたりしている様子が公開されたりしているので、「男性不在」の意識/無意識がどうなってるんだろう/どうしたいんだろうとは思う。同グループのバンドセットライブ1も別にそのへんにはこだわってない雰囲気。

加えて航空業界の特殊性や当時の大日本帝国的世相も反映して、関連人物には軍人や貴族に連なる者も多く登場します。社会進出のきっかけを担ったエアガール関係者たちも容姿端麗のお嬢様だったりで、よく考えれば主人公も予めゲタをはいている話であるところの、「シンデレラ」の域を出ない。彼女たちエアガールの誕生に貢献した主人公の喫茶店ウエイトレス、松永すいが市井の出かと思いきや結局は貴種譚オチだったのも、クラシカルな出来事のトレースに終始した感じがなんだかなあという風ではありました。社会進出の立役者は間違いなく裏方に相当する教官チームなんだけど、時間やプロットの都合かエアガール候補生たちの側が完全に希薄化しちゃってたのも残念。民間航空の父に対比した、エアガールの母のエピソードということなのでしょう。

まあでも今も普通にいくらでもそこらに落ちてますね、認識の停滞。さいきん環境の変化とともにコミュニティの一部が替わったのですが、それに伴って新たな付き合いが生じた中に、特定の職種のことを指して「女性」と言ってしまうような方がいて。まあ当該組織の職種間男女比率がきっと偏っていて、性別=職種というふうに規定できてしまい、無意識のうちにそう言うようになってしまったんでしょうけど。あと男女共同参画感をアピールするために、求人広告で通常は考えられない絵面つくって撮っちゃうとかね、聞いたことありますね。こわいなあ、元号変わったぞ。でもこういう危機意識への疎さと、冒頭で書いた「予約されたパーティションの中で保障された社会参画」の化石化って、通底もいいとこじゃないですか。「コロナ禍」によって経営・雇用のスクラップ&ビルドが進むであろう中で、このあたり、どれくらい変わることができるんでしょうね。


トキヲイキル 第 6 回本公演『エアガール!』2