公演中でもネタバレします。Google+ から過去ログも加筆移行中(進捗 7 割程度)。

『朝日のような夕日をつれて M ver.』 / STAGE THE WORKOUT

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怪童 東拓海の絶技に酔いな!

端的に言うとこういうこと。

E ver. と共通して言える脚本あるいは意識の問題点

E ver. のほうで書いた。

cobayahi.hatenablog.com

M ver. について

オール W キャスト、2 組に分かれての上演において、相対的にベテランでそろえたという座組。括弧内は 2018 年 11 月時点の年齢。

  • 羽鳥翔太(33):部長・ウラヤマ・A
  • 内藤栄一(34):社長・エスカワ・B
  • 中村龍介(33):研究員・ゴドー 1・C
  • 鈴木悠太郎(27):マーケッター・ゴドー 2・D
  • 東拓海(21):少年・医者・E

主要キャスト 3 人が落ち着いた年齢であるだけでなく、ゴドー 2 も E ver. の役者とさして変わらない年齢なのに 30 代の 3 人に劣らない落ち着きがあったし、何より少年役の東拓海の年齢みてびびった。鑑賞中は 27 くらいだろうと思ってた。

フライヤー等では役者の並び順が、中村→内藤→羽鳥→鈴木→東。繰り返しになるが、『朝日』はゴドー 1 の話ではないと思う。

前日の E ver. で文句が頭の中で出尽くしたからか、脚本に関しては割り切って観ることができた。おそらく役者の演技によるところも大きかったのではないか。脚本のアラなどはどうしても、演技に引き込まれないときの雑念の中で増幅されることが多い。M ver. は技術に関しては申し分なかったので、雑念を生じる余地があまり無かったのだと思われる。

中でも凄まじい立ち回りを見せていたのは、座組最年少1の少年役、東拓海。半グレのような不敵な笑みとネコのような身のこなしで、出だしからすでに実年齢を大幅に上回るような雰囲気を湛えていたのだけれど、出番の少ない少年という役の中で一時たりとも、埋もれる場面が無い。VR ゴーグル群舞でのダンスのキレは圧倒的(そりゃセンター獲れるわ)、アルプスの少女ハイジのシーンでも一瞬で悪目立ち(きもい)、終盤の 4 人に突っかかっていくシーンでのアグレッシブさ(物怖じを一切しないところが良い)。そして「ゴドーの覚醒」前の自作(?)熱血スポ根ボウリング企画。演出家によるブラッシュアップもあったのだろうけど、あれ自分でネタ作って持ってきたんだったら、もうそれだけで少年役をモノにしてると言っていいでしょ。ところどころ玉置玲央を意識したのかなと感じる部分はあった2けど、今まで観てきた少年の中では間違いなく一番。コンテンポラリーな少年像は、ここでひとつの完成を見たのではないかと思いました。医者の役も、自分なりに解釈してこなしていたように見えた。

そしてやっぱり残念だったのはウラヤマ役。大高洋夫に寄せるわけでもなく、独自のウラヤマ像はきっと持っているんだろうけど、やっぱウラヤマって大高なんじゃね?エスカワ役は小須田康人に寄せすぎずとも何とかなるんだなという感じはあったけど(けっこう意識はしていたように見えた)。あと、要所要所でとちってたのが大きかったのかもしれない。このとちりはウラヤマに限らず散見はされて、リカバーのためにアドリブを入れる部分があった。ただ『朝日』においてアドリブを入れる余地というのは本当に皆無なので、やりすぎるとドミノみたいに崩れていくなと思いました。このベースラインの維持は、ウラヤマだけでなく、少年を除いた 4 人で緊密に組み上げていかないといけない。『'87』にはあって『'91』にはない、あの感覚。本当に難しい芝居だな。

割り切って観られれば、ウワモノのナイフのようなギラつきで印象がガラッと変わる

主要キャスト 3 人がまだ安定していたことと、ゴドー 2 もそれについていっていたことで、ウラヤマが多少ガタついていた以外はあまり雑念を生じる余地はなく、その上でナイフみたいな東少年がのびのびと、かつサイコに立ち回っていたおかげで、前日とは打って変わって満足感は高かった3

本所松坂亭は本当に狭いハコだったし、出ている役者も全然知らない人たちだったけど、いやあ、とんでもない怪童が眠っているものだ。東拓海、末恐ろしい。

日時

  • 2018-11-11 13:00
  • 於 本所松坂亭劇場

  1. おそらく E ver. 陣を含めてもダントツに若い。

  2. 顔の系統が似ているのが余計にそう思わせるのかもしれない。

  3. ゴドー 1 の中村も、今までにないゴドー 1 の風采でなかなか。登場時の『長い夜』カラオケの絶妙なわざとらしさとか好きでした。